写真が撮りたくなる景色に出会う

写真が撮りたくなる景色に出会う

私が住む街は決して田舎ではない。
日本とは街のあり方が違うので、どんな街なのかを説明することをいつも難しく感じる。
州都のアンコーナの隣町で、電車の駅もあるし街内の循環バスもあるし、
生活施設もすべて街の中に揃っているので不便さを感じたことは無い。
不便を感じることと言ったら、お店やオフィスの開業時間がまちまちであることや、
何事もなんとなくルーズに処理されることなので、街の特性というよりは国全体の個性であって、
イタリアのどのエリアに住んでいたとしても、日本で暮らしたことある人にとっては、
多かれ少なかれ感じる”不便さ”になると思う。

そう、何の不便もない街ぐらしを愉しんでいるわけなのだが、
毎日、必ずと言ってよいほど、写真が撮りたくなるような風景に出会うことができる。
ここかしこに昔からの建物が立ち並んでいる。
無機質な高層建築物が少ない。
圧倒的に人が少ない→人口密度が低い。 
また、一番大きな理由は空を這う電線が少ないことなんだと思うが、
とにかく、毎日がシャッターチャンスといっても良いような景色が目の前に広がるのだ。
近所に住む友達が自宅から仕事場に行くまでに、通常なら30分程度しかかからないのに、
写真を撮りながら向かったら2時間以上も掛かった、と言っていたのがよく理解できる。

今日は所用があり自宅から内陸部へ40分ほど車を走らせた。
空気は冷たいけど、ひざしはあたたかで素晴らしい天気。
街から街へとつながる道すがら、何度、車を停めて写真を撮りたくなったことか。
マルケ州らしいなだらかにつながる丘には、春先を感じる緑にあふれるばかりの陽光。
イタリアに住んでいる人なら、誰れしも経験したことはあると思う。
ミラノやローマの大都市に住んでいたとしても、車で30分も離れればこんな風景が広がるのだ。
この素晴らしい環境、イタリア人にはあまり理解してもらえない。
だから彼らの運転で一緒に行動する時は、近所にある美しい自然の風景を写真に収めることが
ほぼ不可能なことが残念なばかり。

Jesi から Filottranoで撮影。連なる山の向こう側にはアドリア海がある(はず)

慣れてしまえば当たり前で、感動する場面ではないかも知れないが、
なんともありがたい環境に身を置いているんだな、と実感した。
私の幼少時代には、もう身の周りにはこんな景色は存在していなかったと思う。
ぜひ、これからもこのままの姿で残っていて、と願いたくなる風景たち。
こんな風景が近くにある生活もなかなか良いものだ。

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