AISマルケ主宰のワインの”香り”の勉強会へ

AISマルケ主宰のワインの”香り”の勉強会へ

素晴らしい晴天に恵まれた4月30日。日曜日にもかかわらず、朝は6時台に起床し、マルケ州中部に位置する街”Fabriano ファブリアーノ”まで行ってまいりました。
Fabriano に来るのは今回が初めて。アペニン山脈のふもと、350mほどの位置にあり、世界的に有名な製紙会社ファブリアーノがある街として有名で、少し前までは多くの企業の工場が集積していたとか。ここも他の街と同様、経済危機後はその企業も多くが撤退してしまい、以前の活気はなくなってしまったそう。(実際、イタリア中こんな話しばかりで、マルケ州内各地で数多くの”空き/売り工場”を目にします)
Centro の街並み。9時過ぎですが、人影はまばら。
開いているカフェも、広場の1軒のみでした。この赤土のレンガの色と、建物のフォルム、朝の空気と青い空の美しいこと…。まさに、すぐそこにある生きた芸術です。
  

そんな街をあとにして、早速、勉強会会場のHotel Gentileへ。

なぜ今日はわざわざここでこの勉強会が開かれるのか?と言うと、このホテルの”王様”と呼ばれる(パートナーの話ではオーナーであるそうですが)料理長のDomenico Balducci氏がAIS マルケ支部のトップなのです。
左のコックコートの氏がDomenico氏。巨漢です。毎度見るたびに「なんであんなに…?」と不思議だったのですが、シェフだと聞いて納得しました。写真右側に写るのがGiorgio Rinaldi氏。本日の講師役の為にわざわざロンバルディアのコモ地方からやってこられたそうです。前日に到着され、その日はこのホテルでたらふくのDomenico氏のお料理を堪能されたそうで、まだ「食べ過ぎた感」が残っているとおっしゃっていました。
 さて、今日の勉強会はいつもと趣向が違い「ワインのニュアンスと観点を試飲する」という難度の高い内容になっています。そのせいか参加者はほぼAISマルケ支部のお偉方ばかり。ワインもこの会に合わせて海外のものも取り入れられており、参加費がちょっと高めの設定で一人60 euro(AIS会員)、そのためか参加者もぐっと少なく30人程度でした。
ワインを理解し、評価するためには、勉強し、分析し、表現し、確定する。そして、ぶどうの品種とその領土にについてのつながりを考えることが必要。
まさにその通り。だから面白いのがワインなのですよね。
おなじクローンを持つぶどうが使われているのに、味わいや香り、色調が全くことなるのはなぜなのか? おなじぶどう品種を使っていたとしても、地質や気候、作り手の手法ひとつで、全く違うものになってしまうワイン。そんな味わいの差ができるのか?専門的な科学用語も交えて”ニュアンス”が生み出される仕組みをGiorgio Rinaldi先生が丁寧に説明してくださいました。
味わいではなく、ニュアンス(感覚)的に覚えるものが生まれる謎の解明です。
どうしてワインがここまで全世界の人を魅了して止まないのか?この正確に創出し得ないニュアンスの妙だな、と確信した次第です。
二時間以上の講義の後はやっとで試飲。6種類+1種類(Giorgio先生サプライズ)。
〇1本目〇 シャンパーニュ
R&L Regras, Champagne Grand Cru blanc de blanc
シャルドネ100%
コートブランエリアのグランクリュシャンパン。ニュアンスはシャンパン特有の”焼いたパンの香り”。泡は驚くほどきめ細かく、持続性はとても長い。泡系のワインは、泡がパンとはじけるごとにその香りを放出させるので、グラスのスワリングは必要ありません。それにしてもこのシャンパーニュ、泡の数が多いためグラスからこぼれるほどの素晴らしい香り。さわやかなキレのある香よりも、香ばしい豊潤なニュアンスです。

〇2本目〇ドイツの白
Markus Molitor Riesling QBA Alte Reben
リースリング100%
イタリアではあまり口にできない品種のリースリング。日本時代のワインバーではほぼ毎日戴いておりました。ただ、甘口仕様でしたが。モーゼル地方のワイナリーとのこと。リースリングは酸味とフルーティさ、果実感なんてイメージがありましたが、これは最初のインパクトはミカンの皮の香り。確かに果実の香りですが、あの特有のテカリを出すためのオイルの香りが混じっているような雰囲気もあります。ペトロ―ル香ですね。あとはシャルドネで感じられる火打石の香りも。不思議。

〇3本目〇
Oi Nì Fiano di Avellino  IGP Tenuta Scuotto
2013年 14.5%
グラスに注がれ、スワリングをするも、香りがかるくあがってくる。ただ、その香りがパッションフルーツや黄色い花など、ちょっとねとっとしたニュアンスをまとっている。味わいも重くしっとりとからみつくような濃密さを感じるもの。テイスティングの後、10分後程度に再度グラスに顔を近づけると、まるで南の楽園かのような満載なフルーツ香。酸素にふれることによって、開いていく香りの存在です。木樽に酵母を入れて熟成させ、独特な風合いを醸し出させているとのこと。

〇4本目〇
Langhe Rosso IGT 2011 ROAGNA
日本でもよく見るエチケット、ROAGNA。彼らのワインを戴くのは初めてでしたのでとっても楽しみにしておりました。Nebbiolo 100%。ジャムや熟したイチゴ、森のフルーツなどまったりしたニュアンスが感じられます。香りにあまり気取った感じはなく、まだ荒い雰囲気。ROAGNAのワイン生産ポリシーをブログ記事で拝見すると、この彼らのワインの香り(味わいも)、非常に理解できます。2011年なんてまだまだ若い。タンニンがまだ荒くて、もっと時間をかけて丸みを帯びていくんだろうな、というイメージ。それにしても力強い!

〇5本目〇
Chanti Classico Castell’ in Villa
2011  14 %
マルケ州に住みだして初めてかもしれません、Toscana の Chianti を戴くのは…。もともとあまりChantiが好きでは無くて手に取る機会が少なかったのですが、このCastell’ in Villaはなかなか秀逸。香りもかなり複雑で果実香、スミレや、スパイス香、野菜のような香りなど。味わいもバランスがとてもよくて、前のROAGNAに比べるとタンニンのおさまりがとてもきれい。これがサンジョヴェーゼの個性なのかも。口の中で広がる果実感をゆっくり鎮めるタンニンが良い感じです。

〇6本目〇
Castelnau de sudriraut,Souternes
2009 14.5%
最後はフランスのソーテルヌから。貴腐ワイン。セミヨンとソーヴィニヨンブラン。香りを大して覚えていない…なんでだろう? 粘性はもちろん高かった。味わいは酸がなかなか綺麗に入っていて、甘さもamabile。甘口というよりも、良い感じの甘さとの印象。口に含んだときに甘さより酸のニュアンスを受け取ったので、あとから来た甘さに対応できたような感じもします。シャトーディケムの畑の隣りに彼らの畑はあるそうです。道1本たがえれば、全く味わいは異なるものになるのは理解しております…。

試飲時にワインの細かい講釈はまったく無く、香り、味わい、自分で自分の感性を研ぎ澄ませていく勉強の場。特徴的なニュアンスを持つワインを6種類いただき、ぶどう品種 × 土地 × 作り手 × 他いろいろ から作り出させる感じの差をしっかりと理解することが出来ました。

勉強会後は、AISマルケ トップのDomenico氏が監修するランチブッフェ。3種類のサラミや、フォッサチーズ、ラザニアやピンチネッレ、子牛肉のグリルなど、山盛り戴いて参りました。食事の写真は食べることに夢中で忘れました。円卓で初めて席を一緒にする方ばかりでしたが、日本についてたくさん質問を戴き、勉強後のリラックスした雰囲気で楽しく食事を戴くことが出来ました。
そう…試飲会はこの”食事”も楽しみの一つなんですよね。なんといっても、ちょっとエリアが変わるだけで郷土料理が変わるのが面白い。イタリアの食が魅力的な理由の一つですね。
2017年5月2日
丹羽淳子 にわあつこ Atsuko Niwa   /  Sommelier di AIS

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